ECモールでの営業は今年に入って一段と激しい状況になることが考えられています。楽天の成長率が一息つく形になり、その成長率をそっくりそのままヤフーショッピングとAmazonが担う形になることが予測されます。

■データからみる楽天とヤフーコマースの比較
楽天市場の1月4日現在のデータとしては
モール 42,213 (1/4現在)
楽天トラベル 81,028 (1/4現在)
200,339,474点※1
※1 楽天トラベルの商品数が掲載商品数に含まれているかは不明

他方でヤフーショッピングの9月末時点でのデータは
ヤフーショッピング 340,000
ヤフーオークション 18,372

ヤフーオークションの1月直近のデータは下記の通り
ヤフーショッピング商品数 180,000,000
ヤフーオークション出品数 44,371,877
※ ヤフートラベルおよび一休の状況は割愛

どう贔屓目に見てもデータだけで見る限りヤフーのコマースの方が楽天の物流を軽くしのいでいることは簡単にわかります。しかも9月末時点の数字ですので現時点では相当の規模感に成長していることが予測できます。

■今年考えられる状況
ヤフーは御存知の通り日本最大のポータルサイトで主軸事業は広告事業および会員サービス事業です。コマース関連事業は投資事業として考えて臨んでいます。一方で楽天はコマース自体がメインの事業です。数年前から楽天は銀行業務などFintech事業へシフトをしてはいますが、主たる事業はまだまだコマース事業であることは明白です。メインの事業でヤフーに負けることは楽天の衰退を示すことになります。このまま楽天がヤフーの戦略を黙ってみているということは考えられません。

1.ポイント戦争
先に示唆したとおり、ヤフーはポイントの原資を自社のキャッシュ(基幹事業からの売上利益)を使って投資してきました。つい先日これまでヤフー自身で負担してきたポイントを出店者負担率を上げる発表をおこないました。現時点で4%をヤフー自身が付与してきましたが、4月以降2.5%を出店者が負担することになります。そうすることで、ヤフーはこれから暫くの期間ポイント5倍を恒常的に付与し続けることが可能になります。
他方で楽天は自社のキャッシュをポイント原資として5倍までつけることが出来ないほど、しっかり事業が構築されています。安定した事業構築がされているだけに自社での負担ができません。自社で負担することでPLが痛むからです。そこを敢えてポイント戦争をしかけるとしても、楽天は現在のポイント利用ルールを変更しなければいけません。
現在ヤフーが5倍のポイントをつけられる背景にはポイント失効のタイミングの速さがあります。楽天は楽天が作ったスタンダードとしてポイントの失効がヤフーの失効よりも遥かに長い状況です。今すでに付与しているポイントを活性化しどんどん失効できるようにした場合想定できるのがユーザーからの反発です。楽天ユーザーがポイントシステムを変更することで一気に離反する可能性もあります。
総合的に考えるとポイントを活用した楽天とヤフーの勝負は現時点においてヤフーが勝ち続ける可能性が今年は濃厚です。ポイント活用で勝つということはユーザーから支援されるということになります。

2.販売促進戦争
楽天は数年前からスーパーセールなるものを実施しています。年に4回あるセールですが、セールをするのは出店者。出店者が利幅を削り、広告まで購入してものを販売してきたセールですが年々爆発的な売上をつくることができなくなっています。セールを年に4回も行うわけですから消費者メリットを消費者に明示しにくくなっています。しかしながら、楽天も企業で株主に対して説明責任があります。毎年昨年同期比を超える活動を続けなければいけません。そうなるとスーパーセール自体をやめるわけにはいきません。スーパーセールを継続して実行しつづける必要性があります。
そのスーパーセールにあわせてヤフーショッピングがセールをしかけています。メディアのちからをもっていってるヤフーのバーゲンはもともと力がなかったのですが、出店店舗数に応じて売上が極大化していっています。そもそも広告負担がなく、出店手数料が無いモデルでの出店ですから、出店店舗はその費用を価格に跳ね返すことが出来たということが言えます。そのことから、年末のバーゲンでの売上は各店舗相当な売上を作れたと話を聞いています。通常時の10倍近くはんばいした店舗があるとも聞いています。

■楽天がとることが想定される戦略
ヤフーの出店者数と出品数に楽天のこれまでの鉄板の戦略がことごとく抑えられてしまうことが想定できます。ここで楽天に残されている戦略は原点回帰です。楽天市場に出品していれば売上があがるという絵を色濃く出店者に対して指し示すことが必要になります。そのためには楽天はPVをトップページおよびカテゴリページに集中させ、そこでの広告事業を強化する必要性が有ります。1枠あたりの広告費用を最低限に価格を落とし、コンサルタントを介さず、自動入稿の仕組みを持つ必要性が生まれてきます。しかし、現時点では楽天のROASは100%以下だと思われる傾向があります。※そもそもROASが判定できる仕組みがありませんが。楽天はROASが良いと思われるキャンペーンをうち、楽天の広告の信頼を取戻すキャンペーンをうつ必要性があります。
同時に楽天市場に人を集めるという対外的キャンペーンを打ち続ける必要性が産まれます。ヤフーがこれだけ電車広告やTVCMにお金をかけているさなかですので、なかなか投資しにくくはありますがTVや電車そしてSEMをはじめ総力戦で人を集める必要性があります。何かものを買いたいときはグーグルから楽天に流れ込みやすい仕組みを作り続けなければいけません。
楽天はここで総力をあげて、出店者と消費者両方から魅力的なモールであることを告知してくることが考えられます。その時が売りどきです。この売りどきを知ることが出店者の売上拡大の妙になるのではないでしょうか?

■総括
とまあ、楽天対ヤフーの構図で長々と書きましたが残念ながら最も安定性があるのはAmazonであることは懸命な読者はおわかりだと思います。ECサイト経営は物売りから投資事業の色合いが強くなりつつ有ります。どこに投資するか?もちろん成長性が高いモールに投資するとリターンが最大化できます。そうなると、3月末まではヤフーショッピングに投資。Amazonは現状維持。楽天は状況を静観という状況になるのではないでしょうか?4月以降ヤフーショッピングのポイント戦略と販促戦略次第ではAmazonに投資になるのではないかと思います。また4月に状況を踏まえてレポートを書いてみたいと思います。