CSRを実施する上で重要なのは「らしさ」だと記載したことがある。これには2つの理由がある。一つはマイケルポーター先生のヴァリューチェーンとらしさが深く絡み合っている。もう一つは継続性という問題だ。一つ目に挙げたマイケルポーター先生は若くして競争優位について考え抜いたわけだが、その一つのバリューチェーンはこんなものだ。

購買した原材料等に対して、各プロセスにて価値(バリュー)を付加していくことが企業の主活動である。
バリューチェーンが企業の競争優位性をもたらす理由は、企業内部のさまざまな活動を相互に結びつけることで、市場ニーズに柔軟に対応することが可能になり、結果として顧客に価値がもたらされることに求められる。

この先生が指し示す活動を結びつける、結びつけ方はその企業の成り立ち、背景によってさだめられることになる。これはその企業の持つ文化により意思決定がなされることをさし、その企業らしさを示すことにもなる。これはCSRを実行する上でも同様で、競争優位があり、価値を最大化できるCSR活動を行う上でらしさは軽視すべきではない。CSVを語る上でも同様の事が言える。社会と共有価値を作る上で、企業が作り出す価値が企業内部のバリューチェーンから生み出され、自社が生み出す価値を社会の価値に繋げる時に「らしさ」が重要なものになるという解釈も出来るであろう。

継続するという観点でらしさの役割を考えよう。これは企業体に属したことがない人にはピンとこない話だが、各企業はそれぞれ文化というものを背負う。意思決定、価値基準、行動様式は不明文の文化に縛られる。この文化というのは不思議なもので、各企業ごとに異なる。同時にこの文化にマッチする活動の推進力は強く、継続することができる。この文化「らしさ」にそぐわないものは、推進することも、維持することも難しい。ゆえにCSR活動も当該企業のらしさを見つめ、取り込むことで社内浸透度が高く力強い活動ができる。

CSVはポッと出た話ではなく、マイケルポーターのこれまでの論文の流れを汲んでいるものなので、そこだけ取り上げ話をしても意味を本質的理解ができていないことになる。企業文化というものを体験したことがない方にはピンとこないものとなってしまう。意外とこの辺のトピックについて語るのはつけ刃の知識や聞きかじりの経験では語ることが難しいのではないかとふと思った。

 

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