2020年東京オリンピックに向けて、東京はあと5年急ピッチでバリアフリーを推し進めることを決定した。東京オリンピック開催が決定して以来、毎週のように公共交通機関および公的施設そして宿泊施設のバリアフリーに関するニュースが報道されている。同時に注目されているキーワードが「心のバリアフリー」だ。

東京オリンピック誘致の際に滝川クリステル氏がプレゼンで「おもてなし」というキーフレーズを印象的に使ったこともあってか、ハード面のバリアフリーもさることながら、ソフト面のバリアフリーにも注目が集まっている。東京都知事の舛添要一氏も昨年からことあるごとに「おもいやり」、「言葉と心のバリアフリー」そして「心のバリアフリー」というキーワードを多用しながら東京オリンピック開催に向けた体制について語っている。

心のバリアフリーに35年にわたり向き合ってきた企業が存在する。玩具大手メーカーの株式会社タカラトミーだ。いまから遡ること35年前、株式会社タカラトミーの前身にあたる株式会社トミーにある部署が生まれた。その名もハンディキャップ・トイ研究室だ。当初期はバリアフリーやユニバーサルデザインという概念よりも先に障害者の幼児や児童に向けた玩具の開発を目指し商品開発を行った。

ハンディキャップ・トイ研究室開設から10年後、1990年に株式会社トミーはこの活動を玩具業界全体の活動にしようと日本玩具協会に持ちかけた。以降、この活動は共遊玩具(健常者と障害者が共に遊べる玩具)活動として日本玩具協会の中で引き継がれた。それ以降、日本玩具協会が共遊玩具の普及、推進活動をおこなっており、目の不自由な子供への配慮を加えたものには盲導犬のデザインをマークにした「盲導犬マーク」を表示し、耳の不自由な子供への配慮を加えたものはうさぎのデザインをマークにした「うさぎマーク」を表示している。

先日、日本玩具協会主催の「日本おもちゃ大賞」共遊玩具部門 大賞を株式会社タカラトミーの商品である「JOUJOU みつけてみよう!いろキャッチペン」が受賞した。「JOUJOU みつけてみよう!いろキャッチペン」は、24色を読み取れる色センサーと、音声を再生するスピーカー、タブレットで使えるペン先を持った次世代お絵かき玩具である。タブレットに無料のアプリをダウンロードすれば、ペンから出る音声の内容を字幕表示できるため、耳に障害がある子どもたちも遊べるという玩具だ。また、視覚障害者が使う色識別機と同様の技術が使われており、遊びながら色の感覚を養う手助けをすることができる玩具でもある。

2020年のこころのバリアフリーに向けた、具体的な施策は現段階では不明確な部分も多い。他者に対しておもいやりをもったり、他者のことを気遣える環境をつくったり、そういうことができる人間を育てることは簡単ではないことは容易に想像できる。東京が求められている2020年に向けた多様性を受け入れられる社会インフラを整備するためには、児童や幼児に対する教育、遊びに大きな鍵があるのではないだろうか?