2013年日本の金融庁は「責任ある機関投資家」の諸原則:日本版ステュワードシップ・コードというもの検討を開始しました。この諸原則は機関投資家が、建設的な「目的を持った対話」などを通じて、投資先企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図ることを目的として、金融庁により策定されたものです。これが2014年6月に確定し、現在では下記のように多くの機関投資家が受け入れを行いました。

 

・ 信託銀行等 : 6
・ 投信・投資顧問会社等 : 122
・ 生命保険会社 : 17
・ 損害保険会社 : 4
・ 年金基金等 : 19
・ その他(議決権行使助言会社他) : 7
(合 計) : 175

 

この「目的を持った対話」を促すために、2014年対話の相手である企業側の整備を金融庁と東京証券市場が連動しながら開始しました。これを「コーポレート・ガバナンスコード」といいます。このコーポレート・ガバナンスコードは以下の原則で取り決められました。

 

1.株主の権利・平等性の確保
2.株主以外のステークホルダーとの適切な協同
3.適切な情報開示と透明性の確保
4.取締役会のなどの責務
5.株主との対話

 

この中でも注目するべきは、
2.株主以外のステークホルダーとの適切な協同
になります。

 

上場会社は、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の創出は、従業員、顧客、取引先、債権者、地域社会をはじめとする様々なステークホルダーによるリソースの提供や貢献の結果であることことを十分に認識し、これらのステークホルダーとの適切な協働に務めるべきである。
取締役会・経営陣はこれらのステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の情勢に向けてリーダーシップを発揮すべきである。

 

この考え方の説明の中で金融庁は
近時のグローバルな社会・環境問題などに対する関心の高まりを踏まえれば、いわゆるESG問題への積極的・能動的な対応をこれらに含めることも考えられる。
としています。

金融庁はステュワードシップとコーポレート・ガバナンスコードで企業と機関投資家の対話するための土壌を作りあげました。その対話項目の中にCSRという概念もしっかり盛り込まれています。このコーポレート・ガバナンスコードは5月に東京証券取引所から上場企業に対してこの項目に責任をもって受け入れるかどうかの問い合わせが始まります。6月からは実際に施行することになります。

機関投資家がどの角度でこれらの項目に対して注目し、対話を求めてくるかで話は変わってきますが、CSRが日本の金融においても重要な位置づけに位置づけられた非常に大きな第一歩だと思われます。